今年の2月にARTFUL DODGERSの閉業について記事を書きました。
センスある将来有望なブランドが消滅してしまい、とても残念な気持ちでしたが、、、
今度はLCG界のビッグネーム「GSPEED Chassis」がその活動を終える事になりました。

GSPEED Chassis が 10年目にして幕を下ろすという決断

GSPEEDは、2010年代後半からLCGクローラーの世界で大きな存在感を持っていたアメリカのシャーシブランドです。低重心化を狙ったフレームレールを早くから展開し、G10やカーボン製シャーシをはじめ、コンペマシンのベースとしても広く使われてきました。小さなガレージブランドでありながら、その後のLCGシーンに与えた影響は決して小さくありません。
僕も2021年の1月にGSPEEDのV3シャーシを手に入れ、LCGにのめり込んだ1人です。

そんなGSPEED Chassisですが、公式サイトに、事業終了の告知が掲載されました。
オーナーのGabe Fleming氏本人の言葉によるものです。
告知によれば、GSPEEDが始まったのは2016年8月。
「高性能なシャーシセットを作り、情熱的なRCクローラー愛好家のコミュニティに貢献する」
というシンプルな目標からスタートしたとのこと。
閉鎖の理由は経営難ではなく、人生の次の章に集中するためとのこと。
「父として、息子として、兄弟として、友人として、電気技師として、そしてアスリートとして、完全にそこに居るために一歩引く」
そんな書き方をしています。
そして最後に、こう締めくくられています。
事業は終わるかもしれないが、GSPEEDの精神はどこにも行かない。この名前とそれが意味するものは、いつまでも自分の一部であり続ける。次に何が来ようとも、私は決して Taking It To The Top をやめない。
※在庫処分のため、サイト自体はしばらく開いたままにするとのことです。
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2015年12月、カリフォルニアの一枚の設計から
今回調べていて、Axial公式のブログアーカイブ(2017年7月4日付)に、GSPEEDの成り立ちが書かれているのを見つけました。
GSPEED-LCGシャーシの設計は、2015年12月にカリフォルニアで Gabriel Fleming によって作られた。友人の Gee Spaulding が設計を洗練させ、SolidWorksファイルを作成することで立ち上げを助けた。そこからGSPEED-LCGシャーシは走り出し、世界中へシャーシレールを送り出していった。(https://www.axialadventure.com/axi-blog-archive-approved-aftermarket-frame-rails-for-axialfest-2017.html)

設計の誕生が2015年12月、事業としてのスタートが2016年8月、法人化が2020年3月。友人にCADファイルを作ってもらうところから始まって、最終的に世界中へシャーシを送る規模になった。
この出だしの話が、いかにもLCGシャーシブランドらしくていいですね。
当時のレールは1/8インチ厚のG10またはカーボンスチール、スキッドプレートはTJ RC Products製だったそうです。AXIAL SCX10の重心を下げつつ、サスのアップトラベルを稼ぐ——今から見れば当たり前の発想ですが、2015年末の時点でそれを形にして売り始めていた、ということです。素晴らしい。
GSPEEDが2020年代に残したもの

ここが今回いちばん書きたいところです。製品系譜を並べると、GSPEEDがこのジャンルで何をやってきたかが見えてきます。
- V1-C1:AR44用とAR45ポータル用のキットが用意された初期モデル
- V2-C1 FS:V1系の発展型
- TGH-V3:Team Garage Hackとのコラボレーション。5度の角度付きスキッドプレートを採用。6061-T6アルミ版とカーボン版が存在←僕が買ったのはこれ
- GS-V4:TGH-V3からの進化版。スキッド角度を8度に変更、5mm嵩上げ。G10材とカーボンの2種類
- GS-FS / GS-FS V2:後期の主力シャーシ
- G-SHOT / G-SHOT-FS:チームドライバーのDan Thompson氏が設計したパフォーマンスパッケージ。フロントのリンクをスキッド側で寄せてロールセンターを下げ、リヤは逆に広げて登坂時の安定性を稼ぐ。
注目したいのは、TGH-V3という型番の付け方です。Team Garage Hackとのコラボ製品に、自社の型番体系の中で「V3」という番号を与えている。
GSPEEDは自社ブランドを守ることより、良いものを共同で作ることを優先していました。

その姿勢は「Built By Mr. G」の完成車販売にも表れています。
GS-FSカーボンシャーシに、Super Shafty CP43アクスル、TGH製36%オーバードライブポータルギヤ、Hardcore RCのチタンパーツ。他社製品を惜しみなく組み込んだ一台を、オーナー自らが組んで売る。
ホイールベース12.8インチ、クラス2向け、と競技クラスを名指しで展開。
公式サイトには「Companies that help us SHINE!」(「私たちを輝かせてくれる会社たち」)というページがあり、3Brothers RC、Team Garage Hack、Tech Factory Racing、Hardcore RC、Crawler Connection、Team KNK、Team Ottsix Racing、JJ Customs、Diablo Crawlers、ASD、BentMetal Customsといった名前が並んでいます。GSPEEDは単体のメーカーというより、この生態系のハブの一つだったといっても過言ではありません。
2020年代のLCGコンペクローラーというジャンルは、1社が引っ張って作ったものではありません。
互換性のあるパーツを各ブランドが持ち寄り、ユーザーが自分で組み合わせる文化そのものがジャンルでした。
GSPEEDは、その文化を体現していたブランドだったと思います。
AXIALFEST承認4社の、現在地

ここから少し重い話をします。
2017年7月、AxialはAXIALFEST 2017のアドベンチャークラスで使用を認めるSCX10向けアフターマーケット・フレームレールメーカーとして、4社を公式ブログで発表しました。
- BPC Custom Chassis
- Brazen Scale RC
- Team G Speed-LCG
- Toyzuki’s Fabrication
の4つです。
この4社の、2026年9月現在です。
| メーカー | 現在の状態 |
|---|---|
| Team GSPEED-LCG | 10年で事業終了を発表(本記事) |
| Toyzuki’s Fabrication | 2022年頃まで活動していたが、数年前に閉業 |
| BPC Custom Chassis | なんの報告もないが、サイトは消滅している |
| Brazin Scale RC | 稼働中。Vanquish対応、SCX10Pro対応、6x6用まで展開 |
Toyzukiは2014年創業、ガレージベースの家族経営。「あなたのSCX10を可能な限り競技レベルへ引き上げる」ことに特化し、重心位置やブレークオーバーアングルだけでなくSORRCAルールのスケールポイントまで考慮するという徹底ぶりで、2017年・2018年と2年連続AXIALFESTの承認を受けています。
BPCに至っては1996年創業、20年以上の歴史を持つ老舗でした。
その2つが、今は跡形もない。
ただ、GSPEEDが「10年やって、自分の意志で、感謝の言葉とともに畳んだ」のとは、対照的な消え方です。
一方で、Team Garage Hack、3BrothersRC、Hardcore RC、Super Shafty、Vader Products、DLUX Fab、Beef Tubes、Corrupt Carbon Works、EXO、Negative G RC、NWSD、Victor 1 Whiskyといった面々は今も動いています。全部が消えたわけではまったくない。
なぜガレージブランドは畳まれていくのか

ここからは僕の見立てです。ただ、手がかりは公式の文章の中にあります。
GSPEEDの閉鎖告知には、こういう一文があります。
この10年で、この副業(this side business)は忘れがたい旅へと成長した。
GSPEEDは最後まで「副業」でした。
Gabe氏の本業は電気技師で、告知でもその肩書きを並べています。
Toyzukiも「家族経営のガレージベースのビジネス」とAxialが紹介していた通りです。
このジャンルのブランドは、ほとんどがそういう成り立ちだったはずです。
本業を持つ人が、自分が欲しいものを作り、それが評判になって売れるようになり、気づけば世界中に発送していた。素晴らしい話ですが、同時に構造的な限界も抱えています。
LCGコンペクローラーの市場は、率直に言って大きくありません。
この規模で本格的なRCメーカーへ拡大しようとすれば、設備投資も在庫リスクも人を雇うコストも一気に跳ね上がる。
本業を捨ててそこへ賭けるには、リスクが高すぎる。かといって副業のまま続けるなら、本人の時間と体力がそのまま上限になる。どちらを選んでも、どこかで壁が来ます。

そして、ブームは確実に去りました。2021年初頭から2023年頃にかけての、あの熱量は今無いといっていいんじゃないでしょうか。
ジャンル自体が消えたわけではなく、今も走っている人はたくさんいます。
僕も岩場に遊びに行くなら、LCGは必ず一台は持っていきたいです。
ただ、新しくシャーシレールを買って一から組もうとする人の数は、明らかにあの頃とは違う。
大手メーカーがLCG的な性格を持つRTRを出してきたことも、その一因でしょう。
もうひとつ、これは想像ですが——作り手側の熱も、少し冷めたのではないかと思っています。
自分が夢中だから作る、というのがこの種のブランドの原動力です。
市場が落ち着き、本業と家族が大事になり、10年経てば人生の優先順位も変わる。GSPEEDの告知は、まさにそういう内容でした。経営が行き詰まったのではなく、人生の重心が移ったという話です。
だから僕は、この一連の出来事を「ブームが終わって淘汰された」とは書きたくありません。
そもそもこれは、事業として拡大することを目的にしていなかった人たちの集まりだったってことです。
10年続いたこと自体が、むしろ驚くべきことなんだと思います。
僕にとってのGSPEED

僕が初めて手にしたLCGシャーシがGSPEEDでした。
AXIAL SCX10.3やエレメント ENDUROとは全く方向性が違う走破性の高さに、本当に驚きと感動を覚えたことを今でもよく覚えています。
2021年初めの頃は、関東圏ではLCGをやっている人はほぼいなかったと思います。夏頃からじわじわと広まり始めて、ミッキーロックなんかでLCGのコンペとかが開催されるようになったのが2022年ぐらいですかね。
その後はどんどん広がっていきました。
あの時の熱量は今思い返しても、本当にすごかったと思います。
コロナ禍ということもあったと思いますが、本当にRCクローラーが楽しい時でした。
そんな僕のRCライフの中で強烈な体験をさせてくれたGSPEED Chassis、どうもありがとう。
10年、お疲れさまでした。














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